カーエアコンの仕組み ご案内

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 カーエアコンの故障 豆知識
- -基本は家庭用のエアコンと同じです。
  冷媒用の 「ガス」 をコンプレッサーで圧縮し、高圧になった 「圧縮ガス」 をバルブ により一気に噴射します。液体が蒸発 (気化) する際に周りの熱を奪う習性を利用してエバポレーターを冷やしています。その冷えた空気をブロアモーターにより車室内へ循環しています。ただし、家庭用のエアコンとの大きな相違点は、カーエアコン自身が車と共に 移動しているということです。車のエンジンルームは想像以上に高温となり、また激しい 振動に見舞われます。家庭用のエアコンが10~15年と使用できるのに対し、カーエアコンの寿命はその約半分位とされています。一年に一度 (エアコンを頻繁に使用するシーズン前) は点検をお奨めします。
 

   カーエアコンの故障 簡単検査

 1.ガス漏れ
【症状】 冷えない、冷えが悪い(風は出る)
【原因】 冷媒ガス量が少ない→サイクルのどこかでガスが漏れている
【ポイント】 サイトグラスを目視で確認して、白く濁るように気泡が流れていればガス量が足りない。(正常であれば透明、
       しかし空でも透明)
      ガス漏れ箇所の特定・・・コンプレッサー、コンデンサ、エバポレータ等が比較的多いが、配管類や各部のOリング、
      パッキン類も確認。
     * ガス漏れと同時にオイルも漏れ、コンプレッサーの潤滑不良を招きます。

2.ガスの詰まり
【症状】 完全に詰まれば全く冷えない、詰まり気味の場合は使い初めの何分かは冷えるが徐々に効かなくなる。
【原因】 サイクル内部品の詰まり、(まれに)事故等による配管のつぶれ
【ポイント】 このトラブルが多いのは、レシーバタンク(サイクル内のフィルター)、エキスパンションバルブ(膨張弁)で、
      他には一部車両に装着されるプレッシャーバルブ(エバポレータの凍結防止)である。ゴミなどの異物や
      コンプレッサー内部の潤滑不良による金属粉などが詰まるとガスの循環が妨げられ、冷えなくなる。
      部位や程度により清掃か部品交換で対処。
     * 原因が金属粉の場合はコンプレッサー要注意

3.オーバーチャージ(冷媒過多)
4.放熱不良(コンデンサ)
【症状】 コンプレッサー(マグネットクラッチ)がカチカチとON/OFFを繰り返す。
【原因】 圧力スイッチ(異常な高圧からの保護回路)がはたらきコンプレッサーをOFFにする。
【原因・1】 オーバーチャージ:冷媒ガス量が適正値を超えている。
【原因・2】 コンデンサの冷却不足:電動ファン、カップリングファン、ラジエータ等の不具合によりコンデンサ本体の
       冷却が不十分
     * 圧力スイッチで対応しきれなくなるとリリーフバルブからガスを放出してしまいます。
     * VSVバルブ(アイドルアップを制御)不良が原因のケースもあります。
【ポイント】 ガス量は適正か?、コンデンサのフィンに目詰まりはないか?

5.コンプレッサー不良
【症状】 コンプレッサー、マグネットクラッチから異音がする、エアコンを入れるとエンジンが止まる等。
【原因・1】 マグネットクラッチの不良:ベアリングの摩耗等
【原因・2】 コンプレッサーの不良:コンプレッサー本体またはサイクル内のガス漏れと同時に起こるオイル漏れによる潤滑不良
【ポイント】 異音は重大トラブルの前兆。最終的にはコンプレッサーの焼き付き(ロック)に至り、多額の修理費がかかります。





カーエアコンの故障 上級検査

◎エアコンインジケーターが点滅する(4 A―GE、2 C)
※システムに異常を検知してインジケーターが点滅した時の故障探求法
◎単体点検
○マグネットクラッチ
・作動点検
?マグネットクラッチのコネクター4端子にバッテリーのプラ
ス、ボディアースにバッテリーのマイナスを接続したとき、作動音
がしてマグネットクラッチハブとローターがロックすることを確認
する。
○ A/C アンプリファイヤー(オート) ◎測定条件:外気温 10℃/内気温 25℃
◎注意:
・作動点検?トヨタエレクトリカルテスターにミニテス
・コネクターはアンプリファイヤーに接続したまま、コ
?トリードを接続し、各端子間または各端子とボディ
ネクターの裏側から点検する。
?アース間を測定する。
・測定条件に指示のないものは、エンジン停止、イグ
ニッション S/W ON の状態で点検する。
◎自己診断機能による故障診断 ○ステップ間の切換え
・ステップ1?4の切換えは、ファンスイッチを
・自己診断にはステップ1?4があり、各セン ?操作して行う。
サーの故障の有無の点検、各出力機器に対して決 ファンスイッチ OFF …ステップ1
められた制御信号を出力し、その動作を点検する ???AUTO…ステップ2
ことができる。 ???????1速…ステップ3
○自己診断モードへの切換え ?????2速または3速…ステップ4
・キースイッチを OFF の位置にする。
・キースイッチが OFF の位置
からエンジンを始動し、10秒以
内に REC スイッチを約5秒以
上押し続けると、自己診断(ス
テップ1)が開始する。
○自己診断の終了 ?
・キースイッチを OFF にする。
・A/C スイッチを ON にする。
◎自己診断表示項目
○ステップ1?表示灯の点検
?コントローラー各スイッチの表示灯の点検を行う。
正常時:REC、FREおよび A/C スイッチの表示灯
が点滅する。VENT → B/L → FOOT → DEF → Rr/
DEFの順にスイッチの表示灯がそれぞれ2回ずつ
点滅する。
異常時:異常箇所が点滅しない。
○ステップ2?各センサーの点検
?ステップ2に切換えたとき、RECスイッチの表
示灯が点滅し、その後、判定結果を表示する。
オートアンプに入力している各センサー類のデー
タをチェックする。
注意:設定温度を 25℃に設定すること。
正常時:A/C スイッチの表示灯が点灯する。
異常時:異常があるセンサーに対応するモードス
イッチの表示灯が点滅する。
また、
複数のセンサー
に異常がある場合は、AUTO → VENT → B/L →
FOOT → DEF → Rr/DEF の順に、該当するモード
スイッチの表示灯がそれぞれ2回ずつ点滅する。
注意:○日射センサーは屋内、夕方等の照度不足
???の時は異常判定される場合がある。
???○異常時、RECスイッチの表示灯は消灯する。
該当する表示灯がそれぞれ2回ずつ点滅する。以
上により、いずれかのドア位置が異常と判断され
た場合は、モードドアアクチュエーターまたはイ
AUTO 1 2
ンテークドアアクチュエーター不良となる。
0 3
注意:ステップ3診断中に、バッテリー電圧が12
V未満になるとアクチュエーターのスピードが遅
くなり、正常作動時でも NG と判断される場合が
あるため、診断はエンジンを始動して行う。
○ステップ3?モードドア位置の点検 ○ステップ4?各出力機器の点検
?ステップ3に切換えたとき、AUTO、RECおよ ?ステップ4に切換えたとき、出力状態に対応す
びFREの表示灯が点滅し、その後、判定結果を表 るモードスイッチの表示灯が点灯し、D E F ス
示する。 イッチを押すごとに VENT → B/L → FOOT →
?モードドアアクチュエーターおよびインテーク DEF → Rr/DEF → AUTO と切換る。
ドアアクチュエーターのドア位置をチェックする。 ?このステップでの点検は、次の表に示すように
注意:全ドア位置を点検するために約20秒かかる。 オートアンプがモードスイッチの表示灯に合わせ
て各アクチュエーター、ブロワファンモーター、
正常時:AUTO、REC および FRE の表示灯が点 コンプレッサーおよび ECCS/U へ強制的に出力
灯する。 する。その出力に対してそれぞれの作動状態を目
異常時:異常があるドア位置の表示灯が点滅す 視、作動音、吹出口に手を当てるなどの方法で確
る。また、複数のドア位置に異常がある場合は、 認、点検する。

クーラーガスについて
冷却装置の冷媒となるクーラーガスには2種類有ります。

:特定フロン(R12)
:代替フロン(R134a)
特定フロン(R12)は1996年から日本をはじめとする先進国では生産が禁止されています。


フレオロカーボンの種類と特性 HFC CFC
商品名 HFC-134a R-12
成分 HFC-134a CFC-12
化学式 CH2FCF3 CCI2F2 
分子量 102 120.9
沸点(℃) -26.2 -29.8
臨界温度(℃) 101.2 111.8
臨界圧力(MPa) 4.07 4.12
飽和蒸気圧(20℃)(MPa) 0.57 0.65
蒸発潜熱(沸点)(KJ/kg) 216 166
熱伝導率(25℃)飽和液体(mW/m・K) 82 70
熱伝導率(25℃)常圧蒸気(mW/m・K) 13 10
燃焼範囲(vol%空気中) 不燃 不燃
オゾン破壊係数 0 1
地球温暖化係数 1300 8500

エアコンオイルについて

デンソー、ベンツ、ACデルコ、デンゲン製のオイル

デンソー製のオイルの種類
R12 鉱物系
ND-OIL6 ロータリー用コンプレッサーオイル
ND-OIL7 ベーンタイプコンプレッサー
134a シリコン系 
ND-OIL8 ロータリー用コンプレッサーオイル
ND-OIL9 ベーンタイプ用コンプレッサーオイルが有ります。


冷凍機に使用される潤滑油は、冷媒と常に共存した状態で系内を循環するため、冷媒との相互溶解性の良いことが必要です。従来用いられていた特定フロン、指定フロンは、鉱油との溶解性が良好でしたが、代替フロンは鉱油には溶解しません。カーエアコン(R134a)は、ポリアルキレングリコール(PAG)が世界的に使用されています。


マッキンリー探知機 (クーラーガスの漏れ探知機)

以前 使用してたクーラーガス探知機
プロパンガスの燃焼によりフッ素系冷媒ガスの漏洩箇所を敏感に感知する事が出来ます。
吸入管より入る空気に冷媒用ガスが混入して銅版部に当たると炎色が変わりガス漏れがハッキリと判ります。
量の少ない時(濃度の低い)緑色
量の多い時 (濃度の高い)鮮青色  となります。


フルオロカーボンリークディテクター (クーラーガスの漏れ探知機)

マイクロプロセッサーでコントロールされた全自動漏洩探知器で、CFC,HFC,HCFCや、混合冷媒のわずかな漏れも完全に発見できます。音とランプで知らせます。


ブラックライト (クーラーガスの漏れ探知機)


蛍光剤をクーラーガスに注入しておきます。
漏れのあった場合ブラックライトをあてると発光します。
これにより漏れている個所が特定できます。

フロロダイAPD(蛍光剤)の特長
*安全と信頼
フロロダイAPD(蛍光剤)は対象となる液体や機器システムに対して全く影響を与えません。本システム及び蛍光剤を使用するサービスマンに対しても安全・無害です。
また地球環境にも一切影響を与えません。(EPA:米国連邦環境保護局認定商品)(Castrol社・GM社・Chyrsley社・elf社承認)

*効力は半永久的
フロロダイAPD(蛍光剤)の効力は長時間にわたり太陽光線の直射されないぎり半永久的です。したがって機器内にAPDを注入してしまいえば対象液を交換しないかぎり機器内部を常に循環していますのでいつでもリーク探知ができ定期的な予防点検ができます。


*どんな微細なリークでも探知可能
フロロダイAPD(蛍光剤)は、液状冷媒と完全に溶解します。そして冷媒がガス化すると分子レベルのミストとしてガス化した冷媒のなかにも混合しますので、どんな微細なリークでも見つけ出すことができます。(年7?までのリーク量でも探知可能) 潤滑油にも完全に溶解し自己蒸発や凝固それによる濃縮は生じません。





カーエアコンの故障 プロ級検査


カーエアコンの故障 何処が悪いのか プロの監査の仕方教えます
 しかし ある程度の知識がないと 理解できません そこで少々お話しします 

 車種により少し違いがありますが 原理や構成部品は、基本的にどの車種でも一緒です、
 クルマに限らず、家庭のエアコンや冷蔵庫、も同じです。


〇なぜ冷えるのか、原理を簡単に・・・
  一般的に例えられるのは、注射をする時にやるアルコール消毒です。肌に塗られた時、
 スースーしてヒンヤリした感じします。
  これは液体のアルコールが気化する時に、一緒に体の熱を奪っているのです。
  エアコンの冷房装置もこれを利用しています。高圧の液体(フロンガス)を
 車内にあるエキスパンションバルブで減圧すると気化します、この状態でエバポレータへ導くと、
 熱を奪って冷えます。気化した冷媒はコンプレッサで圧縮されコンデンサへ送られ、
 車内で奪った熱を外部に放出します、するとまた液体になりエキスパンションバルブへ送ります
  この繰り返しとなります。これを冷房サイクル 冷凍サイクル、エアコンサイクルなどと呼びます

〇冷房サイクル
 高圧液体 → 低圧液体 → 低圧気体 → 高圧気体 → 高圧液体
 と姿を変えながら冷房サイクル内を循環しているのです。

〇コンプレッサ(圧縮機)
 冷房サイクルの構成部品の要の部品。冷媒を圧縮して、熱の移動を行う。

〇コンデンサ(凝縮器)
  ラジエータの前方にあって、コンプレッサから送られて来た高圧気体冷媒を冷却し、
 高圧液体冷媒に変化させる。車内の熱はここで放出される事になる。

〇リキッドタンク「レシーバ ドライヤ」
  コンデンサで液化された冷媒の中には気体冷媒も若干含まれるので、
 ここで分離されます。また負荷が変動しても円滑に作動できるよう、
 液体冷媒を蓄える役目がある他、不純物、水分等を除去するフィルタやドライヤ(乾燥剤)
 が入っています、「レシーバ ドライヤ」と言う別名はココからきています。
  エアコン関連部品の中では最も消耗品的な存在です。
  なお、乾燥剤は吸湿しやすいので、配管を外した状態で長い時間放置したり、
 冷媒が完全に抜けた状態で長期間放置すると使用不可になります

〇エキスパンションバルブ(膨張弁)
  リキッドタンクから送られて来た高圧液体冷媒を絞り弁の効果で減圧させる。
 減圧された冷媒は蒸発し始める。
 エバポレータ出口付近で蒸発が終わるように感温筒で温度を検知しながら、
 絞り弁は自動調整される。

〇エバポレータ(蒸発器)
  エキスパンションバルブで減圧された冷媒がここで蒸発(気化)する。
 蒸発する際に周囲の熱を奪うので冷える仕組みになっている。
 構造はラジエーターやコンデンサーと同じで、ファンで風を通過させる事により冷風が出る。

〇サクションスロットルバルブ(STV)
  気温がさほど高くない時に、低圧の圧力が下がりすぎてエバポレータが凍結する。
 凍結すると霜で風が出なくなる、冷媒温度が0度以下(圧力=2kg/cm2以下)
 にならないように自動調整する機能。これを使用している車種は少い。
 

注意1 高圧配管は高温になっている可能性があるので、火傷に注意すること。

注意2 冷媒が殆どない状態での作動は、コンプレッサの焼き付きの原因になるので要注意
    検査のため やむを得ず作動させる場合は、エンジン回転はアイドル状態とし、
    極力短時間にとどめること。

注意3 フロンガスは直接触ると凍傷の危険があります 目に入ると失明の危険があります
    高圧ですので用注意  火のある所では 有毒ガスに変化するので要注意

注意4 フロンガスは大気開放は厳禁。法規に抵触する


ここからが実践です


.不具合の現象別予想原因

1.コンプレッサがONしない(エアコンS/W ONでマグネットクラッチから「カチン」と音がしない)
  可変式コンプレッサーは音が小さいので 信号が来ているかをテスターで確認する必要があります

コンプレッサ マグネットクラッチ不良(コンプレッサO/H)
コンプレッサ マグネットクラッチ回路系の断線、短絡(ヒューズ切れ)
エアコンS/W、リレー不良
サーモSW不良またはコンプレッサ制御系不良(エアコンアンプ )
ロープレッシャS/W不良(冷媒が入っているのにONしない)*
冷媒が少ない(ロープレッシャS/WがONしない)*



2.コンプレッサがONするのに冷えない(吹出口温度と外気温度の差が20℃未満)

冷媒充填量不良(過少、過多)
コンプレッサベルト緩み等により回転していない
コンプレッサ吐出不良でガス圧(高圧側)が上がらない
コンプレッサ オイル過剰
エアコンサイクル内が詰まっている(特にリキッドタンク、エキスパッションバルブ等)
エアコンサイクル内エア混入
エキスパッションバルブ開度不良(開き過ぎ、閉じ過ぎ)
コンデンサフィン目詰まり
エンジンファンカップリング不良(アイドル時のみ冷え不良時)
サクションスロットルバルブ(STV)開度不良によるエバポレータ凍結(冷え不良と言うより、ブロアファンは回転するが風が出ない)
バキューム制御系統異常(冷房サイクル自体は正常に機能しているが冷風が出ない)
バキュームホース切れ
マグネットバルブ不作動
バキュームセレクタ不良
バキュームアクチュエータ不良
ブロアモータ不良(冷暖房問わず風が出ないor弱い)
 
3.異音が出る(エアコン作動時のみ異音が出る)

コンプレッサ(エンジンルーム)から
コンプレッサ不良
マグネットクラッチ不良
コンプレッサベルト不良または緩み
室内から
エキスパンションバルブからの冷媒流動音(異常ではないが、冷媒不足時に音が大きくなる傾向がある)
ブロアモータ不良(ブラシ/コンミュテータ/ベアリング磨耗、油切れ、ファンの羽根の破損)

4.コンプレッサON時のアイドル回転数不良

アイドリング調整不良
FICD作動不良または調整不良
FICD制御系バキューム漏れ、電磁弁不作動

5.オーバーヒート、水温上昇気味

高速運転時に発生
ラジエータ詰まり
冷却水不足
サーモスタット不良
サーモスタット開弁温度仕様違い(別部品装着)
アイドル時、渋滞等ノロノロ運転時に発生
ファンカップリング異常
アイドル回転数が低い(FICD作動不良)
冷却水不足

6.クーラ使用時、室内に水漏れ

クーリングユニットドレンホース外れ、切れ
クーリングユニットケース破損、取り付け不良
低圧配管のテーピング不良、カバー外れ

7.吹き出し口からの風が白い

DRY(フレッシュ)モード使用時
外気の湿度が高い
(DRYモードでは50%外気導入となっており、これをエバポレータで冷却するので結露した風が出やすい → 異常ではない)

COOLモード使用時
インテークドアアクチュエータが全閉していない(外気導入となっている)
気温が低い割に湿度が高い時に使用している(異常ではない)


知識1 真空引き(エアパージ)について

エアコンサイクル部品の交換などで冷媒を抜く作業を行った場合、冷媒充填作業直前に真空ポンプを使って真空引き(エアパージ)を行います。目的は次の通りです。

冷媒を充填されやすい状態にする

サイクル内の水分を蒸発させる(真空状態なら常温でも水は沸騰する) *

*: サイクル内に水分が混ざると冷媒(フロンガス)と化学反応を起こして塩酸になり(オゾン層破壊も確かこの理屈)、部品が腐食してしまうのを防止する

真空引き後、そのまま10分以上放置して完全真空状態が保持できていればOK。もし、真空状態が維持できない場合は、冷媒を充填してもすぐ漏れてしまいます。

これらの工程を経て、ようやく冷媒充填(ガスチャージ)工程に入ります。補充を繰り返すと、空気が混入することがあり、また総充填量も分からなくなるので、何度も補充することは好ましい事ではありません。


知識2 冷媒がないと、なぜコンプレッサは焼きつくの??
コンプレッサには“コンプレッサオイル”が入っており、摺動部の潤滑油として使用されます。冷媒が旧フロン(R-12)か、新冷媒(R-134a)かでオイルは異なり、冷媒と混ざりながら、冷媒と共にエアコンサイクル内を循環しています。 

もし冷媒がない状態でコンプレッサを作動させると・・・

コンプレッサの吐出側(高圧側)からオイルだけが吐出される
冷媒が無いのでオイルはコンデンサ近辺に滞留してしまう
コンプレッサ内のオイルはカラになる
コンプレッサ内部に潤滑不良が発生し、焼きつく
このような結末になります。焼きついたコンプレッサはオーバーホールしないと再使用は出来ません。これだけで費用は5万円以上掛かります。

昭和50年代半ばあたりから、冷媒圧力スイッチ(ロープレッシャスイッチ)が追加され、サイクル内の圧力が異常に低い時はコンプレッサがON出来ない仕掛けになっています。しかしそれ以前の車両ではONしてしまうので、長期間使用していなかった場合は必ず冷媒充填量のチェックをしてからクーラを使用するべきです。特に旧車の場合、サイクル内の気密性は元々あまり高くは無く、シーズン毎に冷媒を補充ような仕様ですから、正常でも冷媒は減っている可能性もあり得るのです(この場合はコンプが焼きつくほど減ってはいないでしょうが)。

「エアコンのスイッチを入れたけど全く効かず、そのまま乗っていたらコンプレッサから異音や煙が出た」なんて言う場合、上記の知識が無かった為に“トドメ”をさしてしまったと言えます。気をつけましょう^_^;

(a) 非作動時の冷媒圧力(簡易点検)

これはかなり・・・いや、ムチャクチャ大雑把な点検です。プロの目から見れば非常に素人臭いやり方で、笑われてしまうかもしれません(笑) でも圧力計が無いのだから、少しは参考になるハズ。
コンプレッサがOFFしている時(エンジンの状態は関係無く)の冷媒圧力はだいたい高圧・低圧とも5~6kg/cm2くらい。エンジンが停止した状態で、ゲージマニホールドを接続する部分(サービスバルブ)の先端を瞬間的に押してバルブを開けてみます。冷媒が入っていれば「シューッ」と勢い良く漏れ出してくるハズ。この音や勢いを覚えておきながら、タイヤのバルブでも同じようなことをやってみます。タイヤの空気圧は約2kg/cm2なので、これと比較すれば、だいたいの事はわかると思います。

サービスバルブがついている箇所は
最近の車は エンジンルームが込み合っているため 分かりずらいが 配管をたどれば分かります
旧車は一般的にはコンプレッサに付いています

コンプレッサ
STV(低圧用のみ)
チェックジョイント(230前期以前のエンジンルーム助手席側にあり)
高圧&低圧配管(エンジンルームが混み入っている最近のクルマに多い)
の4箇所です。旧車では一般的にはコンプレッサにあります。どれが高圧で、低圧かはここまでの文章を踏まえつつ
配管を良く見ればわかるでしょう。ココでの点検は、高圧、低圧どちらでも構いませんが
、高圧側のほうがオイルが飛び散らなくて良いかも。


CAUTION
サービスバルブを開くと、冷媒と共にコンプレッサオイルも出てくるので、飛び散らないように注意します
点検直前にコンプレッサをONしていた場合は、OFFしてから少なくとも5~10分経過してから行います


エアコンのバルブとタイヤのバルブを開いてみて冷媒充填量
 明らかに冷媒のほうが勢いが良い 正常 ~ やや少ない
 タイヤと同じくらい かなり少ない
 タイヤのほうが勢いが良い ほとんどカラ

タイヤのほうが勢いが良いなら、コンプレッサを作動させて点検しても結果は見えています。むしろ作動させた事によるダメージを考えると、ONしてはならない状態です。


(b) リキッドタンクサイトグラスの点検

ここでは主に冷媒量の確認が出来ます。旧車のクーラはガスが抜けやすいので、補充(シーズン毎に補充するくらいでも異常ではない)の要否判断の一つになります。本当は冷媒量と言うよりも、高圧液体冷媒の流れを目視点検するのが目的。
【点検方法】
まずエンジンを始動しエアコン(クーラ)をONします。しばらく走行してからアイドル状態でサイトグラスの中の様子を確認します。

もし、クーラの効きがイマイチで、サイトグラスの状態がBやCであったら、冷媒が減っている可能性が高いので、補充が必要です。

なお、冷媒量が極端に少ないと思われる場合は、コンプレッサ焼きつきを避けるために走行はせず、なるべく短時間に、かつ低回転で確認しましょう。


正常
(液体冷媒の中を気泡が数個、「チョロチョロ~」と流れているのが見える)


冷媒が少ない
(多数の気泡が連続的に流れているのが見える、または白濁している)

サイクル内にエアが残っている

エキスパンションバルブの開度が過大

冷媒が殆どない
(タマに液体のようなモノが流れる程度)

過充填

冷媒が流れていない
(サイクル内詰まり等)

冷媒が全くない

コップレッサが作動していない
(透明)

注1: サイトグラスの状態は、圧力以外にも外気温度、コンデンサ前面温度、天候等の影響により一概に言えない場合がある。
注2: サイトグラスだけでは正確な判断は出来ない。必ず冷媒圧力点検も加味した上で判断する。

(c) コンプレッサ高圧、低圧パイプの温度(簡易点検)

エアコンサイクルの点検で最も重要なのは高圧、低圧の圧力測定ですが、冷媒温度は冷媒圧力に比例するので、配管温度を測ればおおよその判断はつきます。各圧力の正常値(外気温度約25度の時)と冷媒温度の関係は次のようになります。

高圧側冷媒圧力 = 11 ~ 16kg/cm2   ->  冷媒温度= 約50 ~ 60度 (コンデンサ ~ エキスパンションバルブ間)

低圧側冷媒圧力 =  2 ~ 3kg/cm2   ->  冷媒温度 = 約 0 ~ 7度

これを踏まえて、エンジンルーム内のエバポレータ近辺のパイプを触って確認します(高圧側パイプを触る場合は火傷に注意)。

触ってみる配管は右の画像のように、室内から出ている配管2本。合計4本の配管がありますが、最も太いのが低圧配管、次に太いのが高圧配管です。残る細い2本はSTV&エキスパンションバルブ制御用なので無視します。
で、高圧配管が熱くなるか?、低圧配管は冷たくなるか(*)?を確認します。
高圧は熱く、低圧は冷たくなれば、リキッドタンクのサイトグラスにやや多めの気泡が見られてもそこそこ冷えるハズです。

*: 低圧配管は低温になるので、配管に結露または霜付きが発生する

(d) コンプレッサ高圧、低圧配管の圧力(上級者向け)

もし、ゲージマニホールド(冷媒圧力計)があったなら、こちらをご覧下さい。

コンプレッサ~コンデンサ間の高圧配管はかなり高温になるので火傷に注意が必要です。また、エンジン回転中に点検するので、巻き込まれにもご注意を。

高圧側冷媒圧力
(高圧冷媒温度) 低圧側冷媒圧力
(低圧冷媒温度) 不具合現象 サイトグラスの状態原 因
正常 低い
(圧力が負圧になる事がある) 冷えない
冷媒の充填が十分に出来ない
D エキスパンションバルブ調整不良(閉じ過ぎ)
エキスパンションバルブの感温筒ガス漏れ(バルブ全閉の為、低圧圧力は負圧になる)
バルブストレーナ詰まり
リキッドタンク詰まり

正常 高い 冷えが弱い
冷媒充填量が十分なのにリキッドタンクに気泡多い
B エキスパンションバルブ調整不良(開き過ぎ)

低い 正常 冷えがやや弱い
B 冷媒がやや少ない

高い 正常 冷えがやや弱い
D 冷媒過充填気味
コンデンサフィン目詰まり気味
ラジエータファンの冷却風量不足

低い 低い 冷えが弱い
B、C 冷媒不足
リキッドタンク詰まり
リキッドタンク~エキスパンションバルブ間に詰まり
エキスパンションバルブ調整不良(閉じ気味)

ブロアは正常に回転しているが、吹出し口の風量が弱い
(エバポレータが凍結して風の通路を塞いでいる)
A STV作動不良
エキスパンションバルブ感温筒取り付け不良によるバルブ開度不良

低い 高い 冷えない
  コンプレッサ圧縮不足

高い 低い 冷えが弱い
  コンプレッサ~コンデンサ間に詰まり
エキスパンションバルブ調整不良(閉じ過ぎ)

高い 高い 冷えが弱い
全く冷えず可溶栓(*)が破損する
D 冷媒過充填
コンデンサフィン目詰まり
電動ファン不作動(FF車など)

冷えが弱い
B、D サイクル内にエア混入

* : 可溶栓・・・セドグロでは330以降のリキッドタンクに装着。高圧側冷媒圧力が異常上昇時(約35kg/cm2)、システム保護の目的で冷媒を放出する。

* : 可溶栓・・・セドグロでは330以降のリキッドタンクに装着。高圧側冷媒圧力が異常上昇時(約35kg/cm2)、システム保護の目的で冷媒を放出する


B.冷媒漏れ点検

旧フロン(R-12)を使用しているエアコン(クーラ)の場合は、配管等からの冷媒漏れは比較的容易に発見することができます。
配管継手等にオイルで湿った汚れがある場合は、冷媒漏れの可能性が大と言えます。これは冷媒はコンプレッサオイルと共に循環しており、漏れた場合はコンプレッサオイルも一緒に漏れ出すからです。

右は、STVとその周辺の画像です。黄色い丸で囲んだ部分に湿っぽい汚れが付着しているのがわかるでしょうか。このような部分は冷媒が漏れている可能性が高いと言えます。ちなみにこの車両の場合、STV~コンプレッサ間の低圧ホースのSTV側の継手か、サービスバルブが怪しいです・・・
配管継手からの冷媒漏れの場合は、一般的には二丁のスパナ(モンキースパナでも可)を使って増締めしてみます。一旦ホンの少しだけ緩めてから締めなおすと良いでしょう。ナットが大きい(22mm以上)ならある程度強めに締めても良いのですが、小さいナットは手加減しないと破損します。増締めしても漏れるようなら、フレアパイプの接続部密着面で異物を噛んでいるか、キズや虫食い状の腐食が発生している可能性があります。一旦切り離して点検し、状況に応じて清掃/修正/交換をします。
また、80年前後から採用された、継手にOリングというパッキンのようなものでシールしてあるタイプ(それ以前はフレアパイプ式)は、締め付けトルクは重要で、増締めはオススメしません。普通ココから漏れる場合は


C.バキューム点検

230純正エアコンでは、エアコン制御がバキューム方式となっています。これはエンジンのバキュームを利用して、吹出し口や、内部の風の通路を切り替えたり、エンジンのアイドルアップなども行っています。このシステムはセドグロだとY30あたりまで採用されていました。

もし、バキュームが全く掛からない場合、どのようになるか・・・
230に限って言えば、

どのモードにしてもインスト正面吹出口のみからしか風が出ない。
ヒータもクーラも効かない(モードレバー、テンプレバーに関係なく送風しか出ない)。
という状況に陥ります。230ではバキュームホース劣化による制御不能で、クーラもヒータも作動不良を起している車両が多いので要注意です。

これはクーラ使用時の内部の風の流れを示す図です。本来なら、黒い矢印のようなエバポレータを通る経路を流れます。しかし、バキュームが掛からないと、デバータドアはエバポレータ側通路を塞ぐ位置に移動するので、太い赤点線の様にエバポレータではなくヒータコアを通過して吹出口へ向かいます。このときはヒータコアもバキュームウォータコックが作動しない(ヒータコアには温水が流れない)為に、仮にTEMPレバーをホット側にしても温まりません。これは「COOL」だけでなく、すべてのモードでこの状態になります。また、「DRY」、「COOL」モードではバキュームに関係なくコンプレッサはONするので、冷房サイクルが正常ならエバポレータ自体は冷えるのですが、そこに風が通過しないので吹出口は冷たくなりません。

バキューム回路の点検は主に「A/Cバキューム系統点検」に点検方法が載っていますので、そちらを参照下さい。

 
5.冷媒について

A. 冷媒の種類

旧冷媒(R-12またはCFC12とも言う)
92~94年以前の車両は大抵このR-12とよばれるフロン(フレオン)ガスを使用しています。冷媒としては好都合な物質で、直接人体へは無害、製造も比較的容易に出来るそうですが、オゾン層破壊と温暖化(温室効果は二酸化炭素の約8000倍)の原因とされています。1987年にはモントリオール議定書により製造・輸入が禁止されてから価格が高騰しています。しかし、アジア方面からの密輸が止まらないらしく、今でも相当数が流通しています。たま~にどこかの業者が密輸、密造で摘発されている新聞記事を目にしますが・・・
と言うことで現在はオススメできない冷媒です。もし規定量(1200g)のガスが大気に漏れたら、CO2で8トン相当の温室効果ガスを放出した事になります。
また、補充ばかり繰り返すと、サイクル内の空気が混入するので内部で塩酸が生成し、部品が腐食します。


新冷媒(HFC-134aまたはR-134aとも言う)
R-12に代わって採用された冷媒です。基本的にはコンプレッサオイルが異なるので、混用は不可。冷媒としての機能はR-12より若干劣り、性質に合わせて各装置の性能・仕様も異なります。
ただし、アメリカでR-12のシステムでR-134aを使用可能にさせるキット(レトロフィットキット)が一般のカー用品店でも売っていて、これは日本の輸入工具販売会社でも販売されています。コンプレッサオイルに専用添加剤を注入することにより、システムはそのままでR-134a仕様に転換させるものです。HPもあるのでそちらをご覧下さい。検索サイトで「サンケン」で探せば見つかります(笑)
なお、R-134aも1997年の京都議定書により温室効果ガス(二酸化炭素の約1000倍の効果)に指定され、近い将来、使用が制限される予定です。
* R-12からR-134a仕様に改造する情報は当ページの「投稿コーナー」にも掲載しています。


代替フロンその1
R-12用システムに使用可能という謳い文句で出回りました。確かR-134a用のシステムにも使えるとか言っていたような気がします。主成分はR-134a。しかし、トラブルが多発する、とのウワサが出回っており、恐くて手が出せません^^;


代替フロンその2
2003年頃から出回りはじめたノンフロン冷媒。ハイドロカーボン系(LPG)で、R-12とほぼ同等の分子の大きさ(R-134aは小さいので漏れやすい)、同等の性能を持つらしいです。部品やコンプレッサオイルはそのまま使え、充填量はR-12の時の30~50%でOK。高圧圧力はやや低めでも十分熱交換が行われるので、コンプレッサへの負担も小さいとか。100g缶で販売されています、

冷媒3種類。左から、旧冷媒(R-12)、新冷媒(R-134a)、ノンフロン冷媒


蛍光剤
これは冷媒ではありません 微妙な冷媒漏れを検知するのにサイクル内に混ぜて使う蛍光剤です。予めこれをコンプレッサオイルに10ccほど混ぜておくと、冷媒漏れがあった時に漏れ部位から蛍光剤も一緒に漏れ出します。そこに専用のブラックライトを照射すると黄色く光るので漏れ部位が特定できる、と言うもの。特に微妙な漏れや、もともと漏れた跡が付き難いR-134a系冷媒使用車に有効です。もちろん、R-12用とR-134a用があります。
詳しくは電装屋さんか修理工場にお問い合わせ下さい。

B. 冷媒とコンプレッサオイルの交換

こんな話は聞いたこと無い・・・まぁ、そうでしょう。特にR-12の交換なんてタブーかもしれません。しかし、昭和40年代の資料などで調べていくと、「冷媒とコンプレッサオイルは毎シーズンの初めに交換する」と記載されています。なぜ交換なんて必要あるのか??理由は水分です。使い続けると水分を含んでしまうので、漏れが無くても一旦全部抜いて、新しいガスに入れ換えるのが望ましいそうです。

サイクル内に水分は厳禁です。これは主に2つ理由があります。

コンプレッサオイルが吸湿して劣化する
R-12が水分と反応して塩酸に化学変化する
充填時には予め真空引きを行いますが、目的は充填し易くする為や、気密度をチェックする為だけでなく、常温でも水分を蒸発させてカラカラにさせる為でもあります。しっかり真空引きすれば大丈夫そうですが、実はそうでもありません。使用過程で水分が浸入してきます。これは主にゴム部からです。ゴムはミクロの世界では穴だらけですから、どうしても水分が透過していきます。

R-12と水分が化学変化を起こすと、

CCl2F2 + 2H2O -> 2HCl + 2HF + CO2
冷媒(R-12)   水分   塩酸        

と言うように塩酸に変化します。これが鉄、アルミ、銅を腐食させてしまいます。
長期間使用したエアコンサイクル部品を分解すると、かなりの腐食を目の当たりにします。コンデンサやエバポからガス漏れを起こす事もありますが、原因は大抵コレです。
従ってR-12を充填したまま補充だけで何年も使用すると塩酸濃度が増すので、構成部品をダメにしてしまいます。また、補充を繰り返すと、充填されている総量がわからなくなるので、充填量管理の意味からも好ましい事ではありません。

一方、コンプレッサオイルも吸湿すると劣化し、特にコンプレッサ本体の潤滑不良を引き起こします。新品のR-12用コンプレッサオイル(スニソオイル)は無色透明です。吸湿すると黄色っぽく変色し、酷くなると茶褐色になります。また、コンプレッサオイルは冷媒がR-12用とR-134a用で異なり、互換性はありません。

以下はコンプレッサオイル交換の手順です。使用頻度にもよりますが、旧車なら5~10年に1回は交換すべきだと思います。オイル交換=冷媒も交換になるので、配管を外すような修理の場合は必ずやりたいメニューの一つです。

【コンプレッサオイル交換】

冷媒が入っている場合はオイルリターン運転を行います。
これはオイルがサイクル内に分散しているので、極力コンプに戻すために行います。エンジンを掛けコンプをONし、約1000rpmで10分ほどアイドルで放置します。これである程度のオイル回収は出来ます(完全回収は不可能)。冷媒がない場合はコンプONに出来ないのでパスです。
冷媒を抜きます。
230などの70年代前半のコンプレッサにはドレンがあるので、ここを緩めれば排出します。230に使われているSWP167-3A型コンプでは100~150ccくらい抜けます(総量の約半分)。70年代後半以降はドレンが無くなるので、このタイプの場合はコンプを一旦取り外し、逆さにして配管継ぎ手から抜きます。
画像の車両では、前回のオイル交換後10年使用しました。抜き取ったオイル異物の混入は無かったものの、コーヒー色となっており、かなりマズイ状態です。
また、画像ではL字のツールでトレンボルトを緩めようとしていますが、ボルトが固着しているのでソケットレンチでないと緩まないと思います。
オイルを充填します。充填量は抜いた分だけが基本。配管を外している場合は低圧側から注入、それ以外ではゲージマニホールドを使って注入することが出来ます。
続けて真空引き、冷媒充填を行います。

C. オススメの冷媒は?

このご時世、R-12を使用するのは犯罪に近いカモ。↑のほうでも触れましたが、そもそも国内では製造/輸入が禁止されており、入手困難なハズ。当然高価です。と言っても案外流通しているみたいですね。これは密造品の可能性が高いと聞いた事があります。製造方法は比較的易しい為、アジアなどの発展途上国で密造されたものが不正に持ち込まれているとか・・・ 真偽のほどは定かではありませんが、特にサビの無い綺麗な缶の場合は可能性大なのではないでしょうか?

個人的には、R-12では排出時の処理が面倒なのと塩酸化が怖いので、ノンフロン冷媒に変更しています。これに落ち着くまではR-134aも試しましたが、やはり漏れ易いです。R-134aも温室効果ガスに指定されているので、近いうちに規制もされる予定です。
ノンフロン冷媒はどうも知名度が低いので、電装屋さんからも「なんじゃそれ」と言われるかもしれません。 別に私はノンフロン冷媒の会社からお金を貰っている訳ではありません(笑)が、R-12よりメリットはあります。


  長所 短所
旧冷媒(R-12) 製造が比較的容易
人体へは無害
冷媒としての性質良
オゾン層破壊
温室効果ガス(CO2の8000倍)
水分が混ざると塩酸になり、部品を腐食させる。
大気放出は法規に抵触

ノンフロン冷媒 R-12のシステムにそのまま使用可(改造不要)
高圧圧力が低い為、コンプレッサへの負荷、エンジンのパワーロスが少ない
R-134aよりガス漏れしにくい(R-12とほぼ同等)
価格はR-134aとほぼ同等
可燃ガスである (充填時には火気厳禁)
知名度低(笑)
高圧圧力が低いので、コンプON直後の立ち上がり特性がR-12より悪い(初めの効きが甘い

自分のクルマには2003年以降、3台に試しました。冷えはそれほど悪くありませんし、トラブルも皆無です。ただ、一番の懸念点は可燃ガスであること。海外ではガス漏れで爆発したという事故があったとかなかったとか??
国内では今のところそのような事例はありません。旧車の場合は隙間も多いので、室内外ともに気密性は大したことないハズ。多少の漏れが発生してもすぐに拡散してしまい、事実上問題ないと思います。

冷え以外の性能に関しては、充填量がR-12の1/3で済む為、高圧圧力が低めになります。これはコンプの負荷を軽減するので、寿命やエンジンのパワーロスの抑制にもつながるメリットがあります。しかし、これの裏返しの現象として、高圧が低いため走行風の少ない低速時の効きがやや甘く、特に冷え始めるのに少し時間が掛かります。走行風が当れば改善はされますが。

ちなみに、ノンフロン冷媒はLPガス系ですが、燃料ではないので無臭です。

6.参考データ

230純正エアコンの各仕様   最大冷房能力 7000kcal/h
  コンプレッサ排気量 167cc
  コップレッサマグネットクラッチ消費電力 30W
  コンプレッサオイル種類、容量 スニソオイル(冷凍機油#410) 250cc
  冷媒充填量(R-12) 1200g
  ブロアモータ出力 210W
  コンプレッサON時エンジン回転数 800rpm

 

エアコンに使用するコンプレッサには、下記の形式があり、斜板式の可変容量タイプが最良のコンプレッサ形式です。

●レシプロ式
 一番古典的なコンプレッサ形式で、通常、1気筒あるいは2気筒です。直列エンジンのようなピストン/シリンダによる圧縮形式です。構造は簡単なのですが、回転バランスが悪いため、振動騒音がひどく、20年以上前から乗用車用には使われていません。

●偏心型ベーンロータリ式
 円筒状のロータリにベーン(羽根)が2~4枚入る溝が設けられています。ロータリはシリンダ(ハウジング)内で偏心して取り付けられ、一点で、ロータリとハウジングが接触(実際は20ミクロンの隙間をもって)しています。ベーンはロータリの回転で溝の中を出入りし、ベーンの先端がシリンダの内周を摺動します。ベーンは遠心力でシリンダ内周を摺動するため、
 現在でも用いられている形式で、軽量コンパクトですが、一回転あたり、ベーンの枚数分、冷媒の吐出圧力脈動があるため、やや振動騒音に不利です。構造が簡単なため、コストが一番安いのが特徴です。

●バランス型ベーンロータリ式
 楕円状のシリンダ内に4~5枚のベーンをもったロータリが回転するタイプで、ロータリとシリンダは2点で接触(約20ミクロンの隙間)します。一回転当たり、ベーンの枚数×2回の吐出圧力脈動があるため、振動騒音は偏心型ベーンロータリ式より有利です。

●スライド・ベーンロータリ式
 ロータリに2枚のベーンが入り、偏心したロータが回転するタイプです。1回転当たりの2回の吐出脈動があり、この脈動が大きく、偏心型ベーンロータリ式と同程度の振動騒音です。

●スクロール式
 2.5巻きのインボリュート渦巻きを相対回転させるタイプです。相対回転のため、摺動速度が他の形式の1/10と低く、摺動抵抗が低いのが特徴です。吐出脈動は1回転当たり2.5回なので、やや大きく、振動騒音はバランス型ベーンロータリ式と同程度です。
 効率は上記の中で一番高いものの、低回転側では、遠心力による回転スクロールの押し付け圧力が低く、やや効率が低くなります。

●斜板式
 斜めの板を回転させ、この運動により、回転軸方向に設けたシリンダ/ピストン形式で圧縮するタイプです。
 両側に6~10気筒をもつ両側斜板タイプが一般的です。吐出脈動は1回転当たり気筒数分あり、比較的小さいのが特徴です。
 
 以上の形式はすべて固定容量式と呼ばれ、1回転当たりの冷媒の吐出量は一定です。自動車はエンジンの駆動力でコンプレッサを回転させるため、コンプレッサの回転数がかわると冷媒吐出量が変化します。このためエンジンが高回転時には、コンプレッサの冷媒吐出量が多すぎて、ON-OFF運転を繰り返し、効率が低い状態になります。

 これを防ぐために、可変容量コンプレッサというのがあります。これは、斜板式の斜板の角度を調整すると、ピストンのストロークが変化することを利用した形式で、理論的には0~100%の広い範囲で可変が可能です。

●可変容量片側斜板式
 4~7気筒のピストンをもつ形式で、現在、もっとも効率の高い方式です。エンジンの要請により、コンプレッサのトルクを調整できるものもあり、エンジンと協調した制御が可能です。

 ということで、一番高効率なのは、可変容量片側斜板式、次は固定容量のスクロール式になります。スクロール式やベーンロータリ式で可変容量と称するものがありますが、冷媒吐出量は可変できるものの、トルクはあまり変化せず、可変容量時、効率が著しく低下してしまうため、消えてしまいました。

 起動時、トルクがソフトなのには、可変容量式でして、小さい容量から制御することで、起動トルクを最小にすることが可能です。

 日本では、トヨタ車はほとんど可変容量式、本田は一部可変容量式で大半はスクロール式、日産は高級車が可変式で安いのはバランス型ベーンロータリ式、三菱はスクロール式が採用されています。









   ……続く



ガスの充填量、参考
https://manualzz.com/doc/4888050/%E5%86%B7%E5%AA%92%E5%85%85%E5%A1%AB%E9%87%8F%E3%83%87%E3%83%BC%E3%82%BF%E9%9B%86